残業時間の管理表エクセル(建設業)|月末の締めで全員を見る手順、判定の順番、8人の記入例
残業時間の管理表は、月末に全員の数字を1枚で見渡し、上限に近い人を早く見つけるためのものです。建設業では2024年4月から時間外労働の上限が適用されているため、時間外と休日労働の合計、45時間を超えた回数、年の累計まで追う必要があります。この記事では、エクセルの管理表で何を数え、どの順番で判定すればよいかを、8人の記入例で説明します。
目次
建設会社の残業時間の管理は、出面表や日報、タイムカード、勤怠のアプリなど、会社によって元になる記録がさまざまです。月末に給与の計算のために残業時間を合計している会社は多くありますが、上限規制のために「あと何時間働けるか」「特別条項を何回使ったか」まで見ている会社はまだ少ないかもしれません。
この記事では、株式会社サンプル建設(作業員と施工管理の8人)の総務担当が、10月の締めで全員の残業時間を確かめる場面を例にします。社名・人名・数字はすべて架空です。上限の数字は e-Gov 法令検索の労働基準法で、労働時間の考え方は厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」で確かめています。
残業時間の管理表で数えるのは「法定外」の時間
残業時間の管理表で最初にそろえたいのが、何を残業として数えるかです。給与の計算では、会社の所定労働時間を超えた時間を「残業」と呼ぶことが多くあります。一方、上限規制で数えるのは、法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超えた時間外労働と、法定休日の労働です。
| 区分 | 中身 | 上限規制で数えるか |
|---|---|---|
| 所定外(法定内) | 所定7時間30分の会社で、7時間30分〜8時間の30分 | 数えない |
| 法定外の時間外 | 1日8時間・1週40時間を超えた時間 | 数える |
| 法定休日の労働 | 毎週1回(または4週4日)の法定休日に働いた時間 | 合計の上限(月100時間・平均80時間)で数える |
| 法定外の休日の労働 | 土曜を所定休日、日曜を法定休日とする会社の土曜出勤 | 週40時間を超えた分を時間外として数える |
ポイントはここです。残業時間の管理表は、給与のための残業と、上限のための時間外を別の列にしておくと、あとで混ざりません。土曜出勤のように、法定休日ではない休日の出勤は、週40時間を超えた分が時間外労働になります。どの曜日を法定休日にしているかは、就業規則で確かめてください。
1週40時間の数え方の例|土曜出勤がある週
残業時間の管理表で間違えやすいのが、1日8時間の中に収まっていても、1週40時間を超えると時間外労働になる点です。所定労働時間が1日7時間30分、月曜〜金曜が所定の労働日、土曜が所定休日、日曜が法定休日の会社で、ある週に土曜も6時間働いた例で考えます。
| 日 | 働いた時間 | 1日8時間を超えた時間 | 週の累計 |
|---|---|---|---|
| 月〜金(5日) | 7時間30分×5日 | 0時間 | 37時間30分 |
| 土 | 6時間 | 0時間 | 43時間30分 |
この週は、1日8時間を超えた日はありませんが、週の合計が43時間30分になり、40時間を超えた3時間30分が時間外労働になります。給与の計算で「所定外の残業」は土曜の6時間すべてとしていても、上限規制の管理表に入れるのは3時間30分です。逆に、平日に1日9時間働いた日があれば、その1時間は1日8時間を超えた時間外労働として先に数え、週40時間の計算では二重に数えないようにします。細かい数え方は会社の就業規則や変形労働時間制の有無で変わるので、迷うときは社会保険労務士に確かめてください。
残業時間の管理表で見る5つの数字
残業時間の管理表で見る数字は、上限規制に合わせて次の5つです。上限の中身そのものは建設業の時間外労働の上限で説明しています。
| 数字 | 上限 | 数え方 |
|---|---|---|
| 当月の合計(時間外+休日) | 100時間未満 | 毎月 |
| 2〜6か月平均(時間外+休日) | 80時間以内 | 毎月、直前2〜6か月の5つの平均 |
| 45時間を超えた回数 | 年6回まで(36協定の回数まで) | 時間外だけ、起算日から数える |
| 時間外の年累計 | 年720時間まで(36協定の年の時間まで) | 時間外だけ、起算日から数える |
| 36協定の月の時間 | 協定で決めた時間まで | 特別条項の月は時間外+休日 |
全員を1枚で見る管理表に2〜6か月の平均を全部入れると、列が多くなりすぎて読めなくなります。月末の全員の確認では前月との2か月平均までにして、上限に近い人だけ、1人1年分の管理表で3〜6か月の平均を確かめる、という2段構えにすると扱いやすくなります。
残業時間の管理表で月末の締めをする手順
残業時間の管理表を使った月末の締めは、次の4段で進めると、誰が担当しても同じ形になります。
- 記録を集める日報・出面表・勤怠の記録から、1人ずつ法定外の時間外と法定休日の労働を出す
- 先月の表から写す前月までの時間外の累計・45時間を超えた回数・前月の合計を写す
- 当月を入れる当月の時間外と休日労働を入れ、合計・累計・回数・2か月平均と判定を出す
- 職長に返す判定が出た人の翌月の段取りを、職長や現場代理人と見直す
1段目の記録を集めるところで、朝礼・KY・新規入場者教育や、会社に寄って資材を積み込んでから現場に向かう時間などが抜けていないかを確かめます。厚生労働省の解説では、こうした時間は労働時間に当たる例として挙がっています。
2段目の写す作業は、先月の表があれば数分で終わります。年度の初めの4月だけは、前年度の数字から始めるか、0から始めるかを決めておきます。45時間を超えた回数と年累計は36協定の起算日から数え直しますが、2〜6か月平均は年度をまたいで見るので、前月の合計は前年度の3月の数字を写します。
記録が足りないときの直し方
残業時間の管理表を作り始めると、元になる記録が足りないことに気づくことがあります。よくあるのは、日報に現場での作業時間だけが書かれていて、会社に寄って資材を積んだ時間や、現場の朝礼の時間が入っていない形です。厚生労働省の解説では、これらは労働時間に当たる例として挙がっているので、記録に足す必要があります。
直し方は、まず1か月だけ、作業員に出勤から退勤までの時刻を書いてもらい、日報の作業時間と比べることです。差が毎日30分ほどあれば、その30分が抜けていた時間かもしれません。抜けていた時間を足すと、管理表の時間外が増え、上限に近い人が出てくることもあります。数字が増えるのは悪いことではなく、実際の働き方が見えるようになった、ということです。
残業時間の管理表の判定の順番
残業時間の管理表の判定は、1人に1つだけ出すと、月末に見る人が迷いません。重いものから順に並べると、次のようになります。
- 当月の合計が100時間以上 → 法違反(労働基準法 第36条第6項第2号)
- 前月との2か月平均が80時間超 → 法違反(同第3号)
- 特別条項の月で、36協定の月の時間を超えた → 協定違反
- 45時間を超えた回数が36協定の回数を超えた → 協定違反
- 時間外の年累計が36協定の年の時間を超えた → 協定違反
- 当月の時間外が45時間超 → 特別条項の何回目か
- 当月の時間外が40時間以上 → 45時間が近い
- それ以外 → OK
1と2は法律の上限で、36協定にどんな数字を書いていても超えられません。3〜5は、協定で決めた時間を超えたもので、労働基準法 第32条の違反になります。6と7は違反ではありませんが、翌月の段取りを見直す合図になります。7の「40時間」は、会社の決まりで変えてかまいません。
残業時間の管理表の記入例|8人の10月
残業時間の管理表の記入例として、サンプル建設の10月を見てみます。36協定の特別条項は、月の時間(時間外+休日)80時間、年の時間650時間、回数6回です。
| 氏名 | 前月の合計 | 当月の時間外 | 当月の休日 | 当月の合計 | 年累計 | 回数 | 2か月平均 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 〇〇 一郎 | 52 | 38 | 8 | 46 | 368 | 2 | 49.0 | OK |
| 〇〇 二郎 | 47 | 46 | 8 | 54 | 342 | 2 | 50.5 | 特別条項(2回目) |
| 〇〇 三郎 | 98 | 62 | 16 | 78 | 427 | 4 | 88.0 | NG(2か月平均80時間超) |
| 〇〇 五郎 | 78 | 55 | 16 | 71 | 457 | 5 | 74.5 | 特別条項(5回目) |
| 〇〇 花子 | 44 | 41 | 0 | 41 | 321 | 1 | 42.5 | 注意(45時間が近い) |
| 〇〇 六郎 | 60 | 55 | 8 | 63 | 655 | 6 | 61.5 | 協定超え(年の上限) |
〇〇 三郎さんは、当月の合計78時間だけを見れば問題がないように見えます。ところが前月が98時間だったため、2か月平均が88時間になり、法律の上限を超えています。前月の時点で、翌月は合計を62時間以下に抑える必要がありました。(98+62)÷2=80時間だからです。
〇〇 六郎さんは、年累計が655時間になり、36協定の年の時間650時間を超えました。法律の年720時間には届いていませんが、協定で決めた時間を超えているので違反です。年の途中で累計を見ていれば、9月の時点で残り時間が分かり、段取りを変えられました。
記入例から分かる翌月の打ち手
残業時間の管理表の記入例からは、翌月にとるべき手も読み取れます。〇〇 三郎さんは、2か月平均で上限を超えてしまったので、11月は合計をかなり抑える必要があります。〇〇 五郎さんは特別条項を5回使っていて、残りは1回です。〇〇 六郎さんは年の時間をすでに超えているので、36協定の年の時間の中で働かせることはできません。〇〇 花子さんは41時間で、あと4時間で45時間を超えます。
このように、判定の結果ごとに、翌月の段取りの見直し方が変わります。月末に管理表を職長と一緒に見て、上限に近い人の作業を、余裕のある人に振り分けられないかを話し合うと、翌月の判定が変わります。上限を超えてしまった人については、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士に、どう対応するかを相談してください。
残業時間の管理表と割増賃金|月60時間を超えたとき
残業時間の管理表は、割増賃金の確認にも使えます。労働基準法 第37条と政令で、時間外労働は2割5分以上、法定休日の労働は3割5分以上の割増賃金を払います。1か月の時間外労働が60時間を超えた分は、5割以上の割増になります(第37条第1項ただし書)。
| 時間 | 割増率の下限 |
|---|---|
| 法定外の時間外(月60時間まで) | 25% |
| 法定外の時間外(月60時間を超えた分) | 50% |
| 法定休日の労働 | 35% |
| 36協定の限度時間を超えた時間外 | 協定で決めた率(25%を超える率に努める) |
管理表の当月の時間外が60時間を超えた人は、給与の計算で5割の割増になっているかを確かめます。記入例では、〇〇 三郎さんの62時間のうち2時間が5割の対象です。休日労働の時間を60時間に含めるかどうかなど、計算の細かい扱いは、社会保険労務士や所轄の労働基準監督署に確かめてください。
残業時間の管理表をエクセルの無料テンプレートで作るには
残業時間の管理表(全員・月次)の無料テンプレートは、作業員全員の当月の数字を1枚で確かめるExcelです。先月の表から前月までの累計・回数・合計を写し、当月の時間外と休日労働を入れると、合計・年累計・回数・前月との2か月平均と、判定が自動で出ます。判定は、この記事で説明した8つの順番で1つだけ表示します。
| 残業時間の管理表(全員・月次) | ||||||||||||
| 対象の月 | 2027年10月 | 会社・事業場 | 株式会社サンプル建設 本社 | |||||||||
| 月の上限(時間外+休日) | 80 | 年の上限(時間外) | 650 | 45時間超の回数の上限 | 6 | 36協定の特別条項の数字 | ||||||
| 前月までの欄は、先月のこの表から写します(年累計・45時間を超えた回数・前月の合計)。当月の時間外と休日労働を入れると、合計・年累計・回数・前月との2か月平均と判定が出ます。3〜6か月の平均は「時間外労働の管理表(1人・年間)」で確かめます。 | ||||||||||||
| No. | 氏名 | 職種 | 前月までの時間外の累計 | 前月までの45時間超の回数 | 前月の合計(時間外+休日) | 当月の時間外 | 当月の休日労働 | 当月の合計 | 時間外の年累計 | 45時間超の回数 | 前月との2か月平均 | 判定 |
| 1 | 〇〇 一郎 | 型枠 | 330 | 2 | 52 | 38 | 8 | 46 | 368 | 2 | 49 | OK |
| 2 | 〇〇 二郎 | 型枠 | 296 | 1 | 47 | 46 | 8 | 54 | 342 | 2 | 50.5 | 特別条項(2回目) |
| 3 | 〇〇 三郎 | 鉄筋 | 365 | 3 | 98 | 62 | 16 | 78 | 427 | 4 | 88 | NG(2か月平均80時間超) |
| 4 | 〇〇 四郎 | 鉄筋 | 210 | 0 | 30 | 28 | 0 | 28 | 238 | 0 | 29 | OK |
| 5 | 〇〇 五郎 | 施工管理 | 402 | 4 | 78 | 55 | 16 | 71 | 457 | 5 | 74.5 | 特別条項(5回目) |
| 6 | 〇〇 花子 | 施工管理 | 280 | 1 | 44 | 41 | 0 | 41 | 321 | 1 | 42.5 | 注意(45時間が近い) |
| 7 | 〇〇 六郎 | 重機オペ | 600 | 5 | 60 | 55 | 8 | 63 | 655 | 6 | 61.5 | 協定超え(年の上限) |
| 8 | 〇〇 七郎 | 雑工 | 120 | 0 | 20 | 12 | 0 | 12 | 132 | 0 | 16 | OK |
| 9 | ||||||||||||
| 10 | ||||||||||||
| (空欄があと2行つづきます) | ||||||||||||
| NG・協定超え | 2 | 特別条項の月 | 2 | 45時間が近い | 1 | 注意の人は月末までの予定を職長と見直す | ||||||
| 判定は上から順に、月100時間以上 → 前月との2か月平均80時間超 → 36協定の月の上限・回数・年の上限を超えた → 特別条項の月 → 40時間以上(45時間が近い)→ OK、の順で1つだけ出します。 | ||||||||||||
人数が多い会社は、行をコピーして増やせます。毎月シートをコピーして残すと、年の推移も追えます。気になる人の3〜6か月の平均は、1人1年分の「時間外労働の管理表」で確かめてください。休日の取り方は4週8休の計算方法で扱っています。
残業時間の管理表エクセルのよくある質問
残業時間の管理表は、何年保存すればいいですか?
労働基準法 第109条で、労働関係の重要な書類は5年間保存するとされています(経過措置で当分は3年)。残業時間の元になる出勤の記録や賃金台帳とあわせて、会社の決まりで保存期間を決めてください。
日報の時間をそのまま写してもいいですか?
日報に書かれている時間が、法定労働時間を超えた時間か、会社の所定を超えた時間かを確かめてから写します。移動や朝礼の時間が日報に入っていない場合は、足す必要があるかを確かめてください。
2か月平均だけ見ていれば十分ですか?
十分ではありません。3〜6か月の平均で80時間を超えることもあります。全員の管理表で2か月平均が70時間を超えた人などは、1人1年分の管理表で3〜6か月の平均も確かめてください。
残業時間の管理表エクセルのまとめ
残業時間の管理表は、法定外の時間外と法定休日の労働を数え、月末に全員の上限との距離を確かめるための表です。
- 給与の残業(所定外)と、上限の時間外(法定外)を分けて数える
- 見る数字は、当月の合計・2〜6か月平均・45時間超の回数・年累計・36協定の月の時間の5つ
- 判定は重い順に1つだけ出す。法違反(100時間・平均80時間)が最優先
- 前月の合計を見れば、翌月にあと何時間働けるかが分かる
- 月60時間を超えた時間外は5割以上の割増になる
まずは今月の締めで、全員の当月の時間外と休日労働を、管理表に入れてみてください。判定が出た人から、翌月の段取りを職長と見直すと、上限を超える前に手を打てます。
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