労働時間と36協定·公開 2026年10月24日·FUKULO(合同会社商陣)

36協定と災害復旧(建設業)|第139条の例外で外れる上限・残る上限、第33条との違い、時間の分け方

台風や地震のあとの復旧工事では、時間外労働が一時的に大きく増えます。建設業の36協定には、災害時の復旧・復興の事業について、月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内を適用しない例外があります。ただし年720時間と45時間超の年6回は残り、例外を使うには様式第9号の3の2か3の3で協定を届け出ている必要があります。この記事では、その違いと時間の分け方を説明します。

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目次
  1. 36協定と災害復旧の例外とは|建設業の第139条第1項
  2. 36協定の災害復旧に当たる工事|建設業のQ&Aの例
  3. 36協定で災害復旧の例外を使うための様式|建設業の届出
  4. 36協定の災害復旧と第33条の違い
  5. 36協定の災害復旧では時間を分けて記録する
  6. 36協定の災害復旧の記録例|建設業の作業員1人の1年
  7. 36協定の災害復旧の時間を無料テンプレートで管理するには
  8. 36協定と災害復旧(建設業)のよくある質問
  9. 36協定と災害復旧(建設業)のまとめ

大きな災害が起きると、道路や河川、ライフラインの復旧のために、地域の建設会社に急ぎの仕事が集まります。人命や生活に関わる工事なので、昼夜を問わず作業が続くこともあります。そのとき、時間外労働の上限規制がどう適用されるのかを、事前に知っておくことが大切です。

この記事では、株式会社サンプル建設(土木工事業)が、9月の台風で崩れた町道の復旧工事を9月下旬から11月まで行った場面を例にします。社名・人名・数字はすべて架空です。条文は e-Gov 法令検索の労働基準法と同施行規則で、運用は厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」のQ&Aで確かめています。

36協定と災害復旧の例外とは|建設業の第139条第1項

36協定と災害復旧の例外とは、労働基準法 第139条第1項で、工作物の建設の事業のうち災害時における復旧及び復興の事業について、時間外労働の上限の一部を当分の間適用しない、とする決まりです。2024年4月に建設業に上限規制が適用されたあとも、この例外は残っています。

上限一般の工事災害時の復旧・復興の事業
時間外+休日労働が毎月100時間未満適用される適用されない
時間外+休日労働が2〜6か月平均80時間以内適用される適用されない
時間外労働が年720時間以内適用される適用される
時間外労働が45時間を超えられるのは年6回まで適用される適用される
限度時間(1か月45時間・1年360時間)適用される適用される(特別条項で超える)

ポイントはここです。36協定と災害復旧の例外で外れるのは、毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の2つだけです。厚生労働省の解説にも、年720時間と年6回の決まりは災害時の復旧・復興の事業でも適用される、と書かれています。上限そのものの全体像は、建設業の時間外労働の上限で整理しています。

36協定の災害復旧に当たる工事|建設業のQ&Aの例

36協定の災害復旧の例外に当たる工事について、厚生労働省のQ&Aは「災害により被害を受けた工作物の復旧及び復興を目的として発注を受けた建設の事業」をいい、工事の名称などにかかわらず、特定の災害による被害を受けた道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設などの復旧・復興の事業が対象になる、としています。例として次のものが挙がっています。

  • 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の適用を受ける災害復旧事業
  • 国や地方自治体と結んだ災害協定に基づく災害の復旧の事業(建設業者が直接の当事者でない場合も含む)
  • 維持管理の契約の中で、発注者(民間を含む)の指示で対応する災害の復旧の事業
  • 複数年にわたって行う復興の事業

36協定の災害復旧に当たるかどうかは、最後は個別の事案で判断されます。発注の書類に災害の名前や被害の内容が書かれているかを確かめ、迷うときは所轄の労働基準監督署に相談してください。

36協定で災害復旧の例外を使うための様式|建設業の届出

36協定で災害復旧の例外を使うには、労働基準法施行規則 第70条の様式で協定を結び、届け出ている必要があります。

特別条項使う様式
設けない様式第9号の3の2
設ける様式第9号の3の3(1枚目は第9号の3の2)

厚生労働省のQ&Aでは、様式第9号の2による協定だけを届け出ていて、様式第9号の3の2か3の3の協定を結んでいない場合は、第139条第1項の決まりを使うことはできない、とされています。災害の多い地域で道路や河川の維持管理を受けている会社や、自治体と災害協定を結んでいる会社は、毎年の36協定の更新のときに様式を確かめておくと安心です。様式の選び方は36協定の記入例(建設業)で表にしています。

様式第9号の3の3の2枚目では、一般の工事に従事する場合と、災害時の復旧・復興の事業に従事する場合を分けて、特別条項の時間を書きます。厚生労働省の記載例では、災害時の復旧・復興の事業の1か月の時間に、100時間を超える時間を書いた例が載っています。

更新のときに確かめておくこと

36協定の災害復旧の例外を使えるようにするには、災害が起きてからではなく、毎年の36協定の更新のときに準備しておく必要があります。確かめておきたいのは、次の3つです。1つ目は、災害の復旧工事を受ける見込みがあるかです。自治体との災害協定、道路や河川の維持管理の契約、地域の建設業協会を通じた要請などがあれば、見込みがあると考えておくと安全です。2つ目は、様式第9号の3の2か3の3で協定を結ぶかです。3つ目は、復旧の時間を分けて記録する方法を、日報や出面表に用意しておくかです。この3つがそろっていれば、災害が起きたときに、時間の管理で迷わずに済みます。

36協定の災害復旧と第33条の違い

36協定の災害復旧の例外とよく混同されるのが、労働基準法 第33条第1項です。第33条第1項は、災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合に、労働基準監督署長の許可(事態が急で間に合わないときは事後の届出)を受けて、36協定とは別に時間外・休日労働をさせられる決まりです。厚生労働省の解説の比較を整理すると、次のようになります。

項目第139条第1項第33条第1項
対象災害時の復旧・復興の事業(建設の事業に限る)災害など避けることのできない事由で臨時の必要がある場合(建設の事業に限らない)
手続36協定の締結・届出事前の許可または事後の届出
効果36協定の範囲で時間外・休日労働をさせられる36協定の時間とは別に時間外・休日労働をさせられる
上限の扱い月100時間未満・平均80時間は外れ、年720時間・年6回は残る上限規制はかからない

厚生労働省のQ&Aでは、災害の復旧・復興の工事は段階を問わず第139条第1項の対象にできる一方、第33条第1項は人命や公益を守るために急いで行う段階(瓦れきの撤去、応急的な補強、仮設住宅の設置など)に限られ、機能の回復がある程度終わったあとの原形への復旧や、復興の段階の工事は対象にならない、と説明されています。どちらの場合でも、時間外・休日労働が1か月80時間を超えるなどしたときは、労働安全衛生法に基づく医師の面接指導が必要になります。

36協定の災害復旧では時間を分けて記録する

36協定の災害復旧の例外を使うときにいちばん大事なのは、一般の工事と復旧の工事の時間を分けて記録することです。厚生労働省のQ&Aは、同じ月に両方に従事した場合、毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は、復旧の時間には適用されず、一般の工事に従事した時間だけに適用されるとしています。年720時間と年6回は両方の時間に適用されます。

  1. 日ごとに分ける日報や出面表で、一般の現場と復旧の現場の時間を分けて記録する
  2. 一般の時間で判定一般の工事の時間外+休日だけで、毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間を確かめる
  3. 両方を合わせて判定一般と復旧の時間外を合わせて、年720時間と45時間超の年6回を確かめる
  4. 復旧のみの月を外す復旧だけに従事した月は、2〜6か月平均の算定期間から外す
図:一般の工事と災害復旧が混ざる月の数え方(厚生労働省のQ&Aをもとにした整理)

さらにQ&Aでは、災害時の復旧・復興の事業だけに従事した月は、2〜6か月平均80時間以内の算定期間の6か月から除外される、とされています。そのため、第139条第1項が適用される時間を、通常の労働時間と分けて管理する必要があります。

日報と出面表での分け方

36協定の災害復旧の時間を分けて記録するには、日報や出面表の段階で、現場ごとに時間を書いておくことが近道です。同じ日に午前は一般の現場、午後は復旧の現場に入った作業員は、それぞれの時間を分けて書きます。月末にまとめて思い出そうとすると、どちらの時間か分からなくなります。

分け方の決まりは、会社で1つにそろえておきます。たとえば、復旧の現場には工事番号の頭に「災」を付ける、日報の現場名の欄に災害の名前を書く、出面表の行を現場ごとに分ける、といった形です。発注の書類に災害の名前が書かれている工事を「復旧」、それ以外を「一般」とすると、判断に迷いにくくなります。

36協定の災害復旧の記録例|建設業の作業員1人の1年

36協定の災害復旧の記録例として、サンプル建設の重機オペレーター〇〇 太郎さんの9月〜12月を見てみます。

月一般の時間外一般の休日復旧の時間外復旧の休日時間外の合計月100時間未満の判定
9月200601680OK(一般は20時間)
10月00952495対象外(復旧のみ)
11月30050880OK(一般は30時間)
12月4480044OK(52時間)

10月は、時間外と休日労働の合計が119時間です。一般の工事なら毎月100時間未満を超えますが、復旧だけの月なので、この判定の対象から外れます。9月と11月は一般と復旧が混ざっていますが、100時間未満と平均80時間は、一般の時間(20時間・30時間)だけで判定します。

一方、時間外の合計は9月80時間・10月95時間・11月80時間で、3か月とも45時間を超えています。年6回の決まりは復旧の時間にも適用されるので、この3か月で3回を使ったことになります。この人の1年の時間外の合計は608時間で年720時間以内ですが、復旧が長引くと、回数と年の時間が先に上限に届くことがあります。

復旧が長引いたときの見直し

36協定の災害復旧の例外で外れるのは月100時間と平均80時間だけなので、復旧が数か月続くと、年6回と年720時間が先に上限に届きます。記録例の〇〇 太郎さんは、9月から11月の3か月で、45時間を超えた回数を3回使いました。年度の初めに一般の工事で2回使っていれば、残りは1回しかありません。

復旧が長引きそうなときは、作業員ごとに「45時間を超えた回数」と「時間外の年の累計」の残りを一覧にして、1人に時間が集中しないよう交代の組み方を考えます。応援の会社に入ってもらう、復旧の現場と一般の現場で人を入れ替える、といった方法があります。復旧のための時間でも、時間外・休日労働が1か月80時間を超えるなどしたときは医師による面接指導が必要になるので、作業員の体調にも目を配ってください。

36協定の災害復旧の時間を無料テンプレートで管理するには

災害復旧の時間を分けて記録する管理表の無料テンプレートは、一般の工事と災害時の復旧・復興の事業の時間外・休日労働を、別の列に入れるExcelです。毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は一般の時間だけで判定し、年720時間と45時間超の回数は両方を合わせて数えます。復旧だけの月は「復旧のみ」と表示し、平均の計算から外します。

災害復旧の時間を分けて記録する管理表(無料Excel)記入用・記入例・説明の3シート
災害復旧の時間を分けて記録する管理表(1人・年間)
氏名〇〇 太郎職種土木作業(重機)36協定の様式様式第9号の3の3(災害時の復旧・復興の事業を含む)
一般の工事と、災害時の復旧・復興の事業の時間を分けて入れます。月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内は「一般の工事の時間」だけで判定し、年720時間と45時間超の回数は両方を合わせて数えます(労働基準法 第139条第1項、厚生労働省Q&A)。
月一般の時間外一般の休日労働一般の合計復旧の時間外復旧の休日労働時間外の合計平均に入れる値月100時間未満2〜6か月平均の最大平均80時間以内45時間超時間外の累計
前年度 10月40040(前年度は一般の時間だけ入れる)40
11月38846(前年度は一般の時間だけ入れる)46
12月45045(前年度は一般の時間だけ入れる)45
1月30030(前年度は一般の時間だけ入れる)30
2月35035(前年度は一般の時間だけ入れる)35
3月40040(前年度は一般の時間だけ入れる)40
4月35035003535OK38.5OK35
5月40848004048OK41.5OK75
6月30030003030OK39OK105
7月42042004242OK40OK147
8月38846003846OK44OK185
9月2002060168020OK37.2OK超265
10月000952495復旧のみ対象外対象外対象外超360
11月300305088030OK34.5OK超440
12月44852004452OK41OK484
1月36036003636OK44OK520
2月48856004856OK48OK超568
3月40040004040OK48OK608
時間外の年合計(両方)608OK45時間を超えた月(両方)4OK

(この下に2行あります。全体はダウンロードしたExcelで見られます)

実際の画面:災害復旧の時間を分けて記録する管理表の「記入例」シート(ダウンロードできるExcelをそのまま表示)

記入例は、この記事の〇〇 太郎さんの1年分です。復旧だけの月をまたぐ平均の取り方に迷うときは、所轄の労働基準監督署に確かめてください。労務フクロウでは、36協定の下書きや、ふだんの月の時間外労働の管理表も登録不要で配っています。

36協定と災害復旧(建設業)のよくある質問

災害の復旧工事なら、時間外の上限はなくなりますか?

なくなりません。外れるのは毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内だけで、時間外労働の年720時間と、45時間を超えられるのは年6回までという決まりは残ります。

様式第9号の2で届け出ているだけでも、例外を使えますか?

使えません。厚生労働省のQ&Aでは、第139条第1項の決まりを使うには、様式第9号の3の2(特別条項は第9号の3の3)で36協定を結び、届け出ている必要があるとされています。

交通誘導警備の会社も対象ですか?

労働基準法施行規則 第69条で、工作物の建設の事業に関連する警備の事業(交通誘導警備の業務を行わせる場合)も、第139条の対象の事業に含まれています。個別の扱いは所轄の労働基準監督署に確かめてください。

復旧工事が長引いて年6回を使い切りそうなときは?

第33条第1項の許可の対象になる段階かを確かめるとともに、応援の人員や交代の体制を組んで、1人に時間が集中しないようにします。判断に迷うときは、労働基準監督署か社会保険労務士に相談してください。

36協定と災害復旧(建設業)のまとめ

36協定の災害復旧の例外は、建設業の上限規制の中で、急ぎの復旧工事に対応するための決まりですが、すべての上限が外れるわけではありません。

  • 第139条第1項で外れるのは、毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内だけ
  • 年720時間と、45時間超は年6回までの決まりは、復旧の時間にも適用される
  • 例外を使うには、様式第9号の3の2か3の3で36協定を届け出ておく
  • 同じ月に一般と復旧が混ざるときは、100時間と平均80時間は一般の時間だけで判定する
  • 復旧だけの月は、2〜6か月平均の算定期間から外れる

災害はいつ起きるか分かりません。毎年の36協定の更新のときに、様式と、時間を分けて記録する仕組みを用意しておいてください。

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