36協定の記入例(建設業)|様式の選び方、一般条項と特別条項の書き方、有効にならない5つの落とし穴
建設業の36協定は、2024年4月から上限規制がそのまま適用されるようになり、特別条項の書き方と様式の選び方が大事になりました。この記事では、労働基準法施行規則で決まった様式の選び方、一般条項と特別条項の欄ごとの書き方、有効な協定届にならない5つの落とし穴を、架空の建設会社の記入例で説明します。
目次
36協定(時間外・休日労働に関する協定)は、法定労働時間を超えて働いてもらう、または法定休日に働いてもらうために、会社と労働者の代表が結び、労働基準監督署に届け出る協定です。届け出ないまま時間外労働をさせると、労働基準法 第32条の違反になります。毎年の更新で、去年の届出の写しを見ながら数字だけ直している会社も多いのではないでしょうか。
ただ、建設の事業は2024年3月31日まで上限規制の適用が猶予されていたため、それより前の協定届をそのまま写すと、今の上限に合わない数字や、足りない欄が残ることがあります。この記事では、株式会社サンプル建設(建築工事業、従業員18人)の総務担当が、来年度の36協定届を作る場面を例にします。社名・人名・数字はすべて架空です。条文は e-Gov 法令検索で、記載例は厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」で確かめたものだけを書いています。
36協定の記入例を見る前に|建設業で変わったこと
36協定の記入例を見る前に、建設業で何が変わったのかを押さえておくと、欄の意味が分かりやすくなります。労働基準法 第139条第2項で、工作物の建設の事業は2024年3月31日まで、限度時間や特別条項の上限が適用されない扱いでした。この猶予が終わり、今は一般の業種と同じ上限が建設業にも適用されています。
| 項目 | 2024年3月までの建設業 | 今の建設業 |
|---|---|---|
| 限度時間(1か月45時間・1年360時間) | 適用されない | 適用される |
| 特別条項の上限(年720時間・月100時間未満・年6回) | 適用されない | 適用される |
| 実際の時間外+休日労働(毎月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内) | 適用されない | 適用される(災害時の復旧・復興の事業は一部の例外あり) |
| 使う様式 | 猶予期間の様式 | 様式第9号・第9号の2など |
ポイントはここです。今の36協定は「協定で決めた時間を守る」ことに加えて、「法律の上限を超える時間を協定に書けない」ことになりました。上限を超える数字を書いた協定届は、窓口で直すよう求められることがあります。建設業の上限そのものの中身は、建設業の時間外労働の上限でくわしく扱っています。
36協定の様式は4つから選ぶ|建設業の様式の選び方
36協定の届出の様式は、労働基準法施行規則 第16条と第70条で決まっています。建設業が使うのは、主に次の4つです。
| 災害時の復旧・復興の事業 | 特別条項 | 使う様式 |
|---|---|---|
| 無い | 設けない | 様式第9号 |
| 無い | 設ける | 様式第9号の2(1枚目と2枚目) |
| 有る | 設けない | 様式第9号の3の2 |
| 有る | 設ける | 様式第9号の3の3(1枚目は第9号の3の2) |
36協定の様式を選ぶときに迷いやすいのが、災害時の復旧・復興の事業を含めるかどうかです。厚生労働省のQ&Aでは、労働基準法 第139条第1項の例外(月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内を適用しない扱い)を使うには、様式第9号の3の2か3の3で協定を結び、届け出ている必要があるとされています。様式第9号の2だけを届け出ている会社は、復旧工事に入ってもこの例外を使えません。台風や地震のあとに復旧工事を受ける可能性がある会社は、更新のときに様式を見直しておくと安心です。くわしくは36協定と災害復旧で説明しています。
- 限度時間を超える見込み月45時間・年360時間を超える時間外労働が見込まれるかを考える
- 災害復旧の見込み災害時の復旧・復興の事業に従事する見込みがあるかを考える
- 特別条項の有無限度時間を超える見込みがあれば特別条項を設ける
- 様式を決める様式第9号・第9号の2・第9号の3の2・第9号の3の3のどれかを選ぶ
- 届け出る事業場ごとに、所轄の労働基準監督署へ届け出る(電子申請も使える)
36協定の一般条項の記入例|建設業の1か月45時間・1年360時間
36協定の一般条項(様式第9号、または第9号の2の1枚目)には、限度時間の中で延長する時間を書きます。欄は「時間外労働をさせる必要のある具体的事由」「業務の種類」「労働者数」「1日・1か月・1年の延長時間」です。サンプル建設の記入例は次のとおりです。
| 具体的事由 | 業務の種類 | 人数 | 1日 | 1か月 | 1年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 施工図の変更・工程の遅れへの対応 | 現場作業(大工・型枠) | 12人 | 3時間 | 42時間 | 320時間 |
| 検査前の書類作成・写真整理 | 施工管理 | 4人 | 3時間 | 45時間 | 360時間 |
| 機械・仮設設備の故障への対応 | 機械オペレーター | 2人 | 2時間 | 30時間 | 250時間 |
36協定の一般条項で大事なのは、1か月は45時間以内、1年は360時間以内に収めることです(労働基準法 第36条第4項)。1年単位の変形労働時間制で対象期間が3か月を超える人は、1か月42時間・1年320時間が限度になります。時間は「法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える時間」で書きます。会社の所定労働時間が7時間30分なら、所定を超える時間を任意の欄に書くこともできます。
業務の種類は、「建設作業」のようにまとめず、現場作業・施工管理・事務などに分けて書くよう、厚生労働省の記載例でも求められています。業務ごとに必要な時間が違うので、分けて書くと労働者代表とも話がしやすくなります。
36協定の特別条項の記入例|回数・月100時間未満・年720時間
36協定の特別条項(様式第9号の2の2枚目)は、臨時に限度時間を超えて働いてもらう必要があるときの決まりです。欄は「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」「業務の種類」「人数」「回数」「1か月の時間」「1年の時間」「割増賃金率」「手続」「健康福祉確保措置」です。
| 臨時に限度時間を超える場合 | 業務の種類 | 人数 | 回数 | 1か月(時間外+休日) | 1年(時間外) | 割増率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 大規模な設計変更による工程のひっ迫 | 現場作業(大工・型枠) | 12人 | 5回 | 75時間 | 600時間 | 30% |
| 竣工検査前の是正対応 | 施工管理 | 4人 | 6回 | 80時間 | 650時間 | 30% |
36協定の特別条項には、法律の上限が3つあります。回数(45時間を超えられる月)は年6回まで、1か月は時間外と休日労働の合計で100時間未満、1年は時間外労働だけで720時間以内です(労働基準法 第36条第5項)。1か月の欄は休日労働を含み、1年の欄は含まない、という違いがいちばん間違えやすいところです。
割増率は、限度時間を超えた時間外労働について、法定の25%を超える率にするよう努めることとされています。厚生労働省の記載例も35%で書かれています。月60時間を超える時間外労働は、労働基準法 第37条第1項ただし書で5割以上の割増になるので、あわせて確かめてください。
事由の書き方にも注意が要ります。厚生労働省の記載例では、「業務の都合上必要なとき」「業務上やむを得ないとき」のように、いつでも当てはまる書き方は認められないとされています。「大規模な設計変更による工程のひっ迫」のように、一時的・突発的な事情を具体的に書きます。
健康福祉確保措置は、①医師による面接指導、②深夜業の回数制限、③勤務間インターバル、④代償休日・特別な休暇、⑤健康診断など、厚生労働省の記載例の①〜⑩から番号を選び、具体的な内容を書きます。実施した記録は、協定の有効期間中とその後も保存します(労働基準法施行規則 第17条第2項、経過措置により当分は3年間)。
36協定の記入例で見落としやすい欄|起算日と有効期間
36協定の記入例を写すときに見落としやすいのが、協定の有効期間と1年の起算日です。どちらも労働基準法施行規則 第17条で協定に定める事項になっています。
| 欄 | 書き方の例 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 協定の有効期間 | 2027年4月1日から1年間 | 1年とするのが望ましいとされています |
| 1年の起算日 | 2027年4月1日 | 途中で協定を出し直しても、起算日は同じ日にそろえます |
| 協定の成立年月日 | 2027年3月10日 | 届出の日より前で、有効期間の初日より前にします |
| 事業場の名称 | 株式会社サンプル建設 本社 | 本社・支店・営業所など事業場ごとに協定します |
起算日は、年720時間や年6回を数える出発点になります。厚生労働省の記載例では、1年の途中で協定の内容を変えて出し直す場合でも、起算日は同じ日にする必要があるとされています。月ごとの集計も起算日にそろえておくと、管理表との照合が楽になります。
事業場については、厚生労働省の記載例に「事業場(工場・支店・営業所等)ごとに協定してください」とあります。工事の現場が独立した事業場に当たるかどうかは、規模や独立性によって判断が分かれるため、迷うときは所轄の労働基準監督署に確かめてください。
36協定が有効にならない5つの落とし穴|建設業の記入例で確かめる
36協定届は、数字が上限の中に収まっていても、形の上の要件を欠くと有効な協定届になりません。厚生労働省の記載例の注記から、建設業でよく見かける落とし穴を5つ挙げます。
- 「時間外労働と休日労働の合計は、毎月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内」のチェックボックスに✓が無い
- 労働者代表に、管理監督者(労働基準法 第41条第2号)を選んでいる
- 労働者代表を、使用者の指名や意向で選んでいる(投票・挙手などで選ぶ)
- 協定届を協定書と兼ねているのに、労働者代表や使用者の署名(または記名・押印)が無い
- 本社の協定だけ出して、支店・営業所の協定を出していない
1のチェックボックスは、厚生労働省の記載例に「チェックボックスにチェックがない場合には、有効な協定届とはなりません」と書かれています。2と3の労働者代表は、36協定を結ぶ人を選ぶと明らかにしたうえで、投票や挙手などで選びます。現場の職長を代表にする会社もありますが、管理監督者に当たる人は代表になれません。
落とし穴の多くは、去年の届出を写したときに残ります。下書きの段階で、5つを1つずつ確かめておくと、窓口で差し戻されるのを防げます。
書き間違いと直し方の早見表
| よくある書き間違い | 直し方 |
|---|---|
| 特別条項の1年の欄に、休日労働を含めた時間を書いた | 1年の欄は時間外労働だけで書く |
| 一般条項の1か月に50時間と書いた | 45時間以内にし、超える分は特別条項に書く |
| 特別条項の回数を「7回」と書いた | 年6回までにする |
| 事由を「業務繁忙のため」とだけ書いた | 工程のひっ迫・設計変更など、具体的な事情を書く |
書き間違いの多くは、去年の届出を写したときや、様式を変えたときに起きます。下書きの段階で表と見比べておくと、窓口での差し戻しを減らせます。
36協定の記入例を無料テンプレートで速くするには
36協定届の下書きと点検表(建設業)の無料テンプレートは、厚生労働省の様式に書き写す前に、数字と書き漏れを確かめるためのExcelです。災害時の復旧・復興の事業の有無と、特別条項の有無の2つを入れると、使う様式の番号が出ます。一般条項と特別条項の数字を入れると、1か月45時間・1年360時間、回数6回・月100時間未満・年720時間、割増率25%を超えるかどうかを点検の欄で示します。
| 36協定届の下書きと点検表(建設業) | ||||||||
| 厚生労働省の様式(様式第9号・第9号の2 など)に書き写す前の下書きです。上限を超える数字や、書き漏れやすい欄を自動で示します。 | ||||||||
| 1. 事業場と協定の期間 | ||||||||
| 事業の種類 | 建築工事業 | |||||||
| 事業場の名称 | 株式会社サンプル建設 本社 | |||||||
| 協定の有効期間 | 2027年4月1日から1年間 | |||||||
| 1年の起算日 | 2027年4月1日 | |||||||
| 2. 使う様式(労働基準法施行規則 第16条・第70条) | ||||||||
| 災害時の復旧・復興の事業がある | 無 | 「有」か「無」を入れる | ||||||
| 限度時間を超える特別条項を設ける | 有 | 「有」か「無」を入れる | ||||||
| 使う様式 | 様式第9号の2(1枚目と2枚目) | |||||||
| 3. 限度時間の中で延長する時間(1枚目) | ||||||||
| 時間外労働をさせる具体的な事由 | 業務の種類 | 人数 | 1日 | 1か月 | 1年 | 点検 | ||
| 施工図の変更・工程の遅れへの対応 | 現場作業(大工・型枠) | 12 | 3 | 42 | 320 | OK | ||
| 検査前の書類作成・写真整理 | 施工管理 | 4 | 3 | 45 | 360 | OK | ||
| 機械・仮設設備の故障への対応 | 機械オペレーター | 2 | 2 | 30 | 250 | OK | ||
| 1日・1か月・1年の時間は「法定労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える時間」で書きます。1年単位の変形労働時間制(対象期間3か月超)を使う労働者は、1か月42時間・1年320時間が限度です。 | ||||||||
| 4. 臨時に限度時間を超える場合(特別条項・2枚目) | ||||||||
| 臨時に限度時間を超える場合 | 業務の種類 | 人数 | 回数 | 1か月(時間外+休日) | 1年(時間外) | 超えた分の割増率 | 点検 | |
(この下に18行あります。全体はダウンロードしたExcelで見られます)
5つの落とし穴は、チェックの欄に「済」を入れていく形にしてあります。この表は下書きと点検のためのもので、提出は厚生労働省の様式で行ってください。労務フクロウでは、時間外労働の管理表など、協定を守れているかを確かめる様式も登録不要で配っています。
36協定の記入例(建設業)のよくある質問
36協定は毎年出し直す必要がありますか?
有効期間が終わる前に、新しい協定を結んで届け出ます。有効期間は1年とするのが望ましいとされているため、毎年の更新になる会社が多くあります。
現場ごとに36協定を出す必要がありますか?
36協定は事業場ごとに結んで届け出ます。工事の現場が独立した事業場に当たるかは、規模や独立性で判断が分かれるので、所轄の労働基準監督署に確かめてください。
特別条項の1年の時間に、休日労働は入りますか?
入りません。特別条項の1年の時間は時間外労働だけで720時間以内、1か月の時間は時間外と休日労働の合計で100時間未満です。
一人親方にも36協定は関係しますか?
36協定は雇用している労働者の時間外労働の決まりなので、請負として働く一人親方には直接は関係しません。ただし、働き方の実態が労働者と同じなら労働者として扱われることがあるため、働き方を確かめておくことが大切です。
36協定の記入例(建設業)のまとめ
36協定の記入例を建設業に当てはめるときは、まず様式を選び、一般条項と特別条項の上限を確かめ、最後に形の上の要件を点検する、という順番で進めると漏れが出にくくなります。
- 様式は、災害時の復旧・復興の事業の有無と特別条項の有無で、第9号・第9号の2・第9号の3の2・第9号の3の3から選ぶ
- 一般条項は1か月45時間・1年360時間以内、業務の種類は細かく分ける
- 特別条項は回数6回まで、1か月は時間外+休日で100時間未満、1年は時間外だけで720時間以内
- 事由は一時的・突発的な事情を具体的に、健康福祉確保措置は番号と内容を書く
- チェックボックス、労働者代表の選び方、署名、事業場ごとの届出の5つを確かめる
判断に迷う欄があるときは、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に相談してください。まずは去年の協定届の数字を、テンプレートの下書きに写して点検してみてください。
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