労働時間と36協定·公開 2026年10月24日·FUKULO(合同会社商陣)

建設業の時間外労働の上限|2024年4月からの4つの数字、2〜6か月平均80時間の計算例、労働時間になる時間

建設業の時間外労働の上限は、2024年4月から一般の業種と同じになりました。数字は月45時間・年360時間が原則で、特別条項でも年720時間、時間外と休日労働の合計は毎月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内です。この記事では、どの上限が時間外だけで、どれが休日労働を含むのかを整理し、2〜6か月平均の計算を実際の数字で示します。

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目次
  1. 建設業の時間外労働の上限とは|2024年4月からの適用
  2. 建設業の時間外労働の上限は4つの数字で覚える
  3. 建設業の時間外労働の上限|2〜6か月平均80時間の計算例
  4. 建設業の時間外労働の上限を超えたときの罰則
  5. 建設業の時間外労働の上限|労働時間になる時間
  6. 建設業の時間外労働の上限を守るための月ごとの管理
  7. 建設業の時間外労働の上限を無料テンプレートで管理するには
  8. 建設業の時間外労働の上限のよくある質問
  9. 建設業の時間外労働の上限のまとめ

建設業では、工期の終わりや天候の遅れを取り戻す時期に、どうしても残業や休日出勤が増えます。2024年3月までは、工作物の建設の事業に時間外労働の上限規制が適用されない猶予があり、36協定で決めた時間の中であれば、法律の上限を気にせずに済む面がありました。

この猶予は2024年3月31日で終わり、今は建設業にも上限規制がそのまま適用されています。この記事では、株式会社サンプル建設の現場作業員〇〇 一郎さん(型枠)の1年分の時間外労働を例に、上限の中身と計算のしかたを説明します。社名・人名・数字はすべて架空です。条文は e-Gov 法令検索の労働基準法で、運用は厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」で確かめています。

建設業の時間外労働の上限とは|2024年4月からの適用

建設業の時間外労働の上限とは、労働基準法 第36条で決められた、36協定で延長できる時間と、実際に働かせてよい時間の上限のことです。労働基準法 第139条第2項で、工作物の建設の事業は2024年3月31日まで適用が猶予されていましたが、今は一般の業種と同じ上限が適用されています。

建設業の時間外労働の上限を考えるときの前提は、法定労働時間が1日8時間・1週40時間、法定休日が毎週少なくとも1回(または4週4日)だということです(労働基準法 第32条・第35条)。これを超えて働いてもらうには、36協定を結んで労働基準監督署に届け出る必要があります。そのうえで、36協定で決められる時間にも、実際に働かせる時間にも、法律の上限がかかります。

対象になる事業は、労働基準法施行規則 第69条で、土木・建築その他工作物の建設などの事業、主たる事業が建設である企業の事業場、工作物の建設に関連する交通誘導警備の事業とされています。本社の事務所や営業所で働く人も、会社の主たる事業が建設なら同じ扱いです。

建設業の時間外労働の上限は4つの数字で覚える

建設業の時間外労働の上限は、次の4つの数字に整理すると覚えやすくなります。

上限数字数える時間条文
限度時間(原則)1か月45時間・1年360時間時間外労働だけ第36条第3項・第4項
特別条項の1年720時間以内時間外労働だけ第36条第5項
特別条項の回数45時間を超えられるのは年6か月まで時間外労働だけ第36条第5項
実際の時間(毎月・平均)毎月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内時間外+休日労働第36条第6項

ポイントはここです。建設業の時間外労働の上限には、時間外だけで数えるものと、休日労働を含めて数えるものが混ざっています。年720時間と年6回は時間外だけ、毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間は休日労働を含みます。厚生労働省の解説には、時間外労働が44時間で特別条項の対象にならない月でも、休日労働が56時間あれば合計が100時間になり法律違反になる、という例が載っています。

もう1つ大事なのは、毎月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内は、特別条項があるかないかに関係なく、1年を通して常に守らなければならないということです。36協定にどんな数字を書いても、この2つは超えられません。協定の書き方は36協定の記入例(建設業)で扱っています。

建設業の時間外労働の上限|2〜6か月平均80時間の計算例

建設業の時間外労働の上限の中で、いちばん計算が面倒なのが2〜6か月平均80時間以内です。その月を含む直前の2か月・3か月・4か月・5か月・6か月の5つの平均を出し、どれも80時間以内であることを確かめます(労働基準法 第36条第6項第3号)。

〇〇 一郎さんの、時間外と休日労働の合計を見てみます。

月時間外休日労働合計2〜6か月平均の最大
9月4485250.3
10月4585352.5
11月7087865.5
12月78169486.0
1月3503569.0

12月の合計は94時間で、毎月100時間未満は守れています。ところが、11月と12月の2か月平均は(78+94)÷2=86時間になり、80時間を超えます。12月は3か月平均(53+78+94)÷3=75時間、4か月以上の平均はもっと下がりますが、5つのうち1つでも80時間を超えれば違反です。

建設業の時間外労働の上限で見落としやすいのが、年度の初めの平均です。4月の平均を出すには、前年度の11月〜3月の数字が要ります。平均は36協定の対象期間をまたいで見ることになるので、管理表には前年度の数字も残しておきます。

翌月に働ける時間を逆算する

建設業の時間外労働の上限は、超えたあとに気づいても取り戻せません。そこで役に立つのが、翌月に働ける時間を前もって逆算することです。〇〇 一郎さんの12月までの合計を使って、1月に働ける時間外と休日労働の合計(x)を計算してみます。

平均の期間計算1月に働ける上限
2か月(12月・1月)(94+x)÷2≦8066時間
3か月(11月〜1月)(78+94+x)÷3≦8068時間
4か月(10月〜1月)(53+78+94+x)÷4≦8095時間
5か月(9月〜1月)(52+53+78+94+x)÷5≦80123時間
6か月(8月〜1月)(30+52+53+78+94+x)÷6≦80173時間

5つのうちいちばん小さい66時間が、1月に働ける合計の上限です。毎月100時間未満より、ずっと小さい数字になります。忙しい月が続いたあとは、平均の決まりで翌月の時間が大きく減ることがあるので、月末に翌月の上限を出して、職長と共有しておくと安心です。

建設業の時間外労働の上限を超えたときの罰則

建設業の時間外労働の上限を超えたときの罰則は、どの決まりに反したかで条文が変わります。厚生労働省の解説のQ&Aをもとに整理すると、次のようになります。

違反の形違反になる条文罰則
36協定を結ばずに、または届け出ずに時間外労働をさせた第32条(労働時間)6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第119条)
36協定で決めた時間を超えて働かせた第32条同上
時間外+休日労働が月100時間以上、または2〜6か月平均80時間超第36条第6項同上

罰則に加えて、長時間の労働は事故や体調不良にもつながります。厚生労働省の解説では、時間外・休日労働が1か月80時間を超えるなどした場合に、労働安全衛生法 第66条の8第1項に基づく医師による面接指導が必要になることにも触れています。数字を守ることは、作業員の安全を守ることでもあります。

管理監督者の扱い

建設業の時間外労働の上限は、労働基準法 第41条第2号の管理監督者には適用されません。ただし、管理監督者に当たるかどうかは、肩書きではなく、実際の権限や働き方、待遇で判断されます。現場代理人や工事主任を管理監督者として扱っている会社は、その扱いが実態に合っているかを確かめておくと安心です。

建設業の時間外労働の上限|労働時間になる時間

建設業の時間外労働の上限を守るには、まず何が労働時間に当たるかをそろえる必要があります。厚生労働省の解説では、労働時間とは使用者の指揮命令下にある時間で、労働時間の考え方そのものは業種によって変わらないとしたうえで、建設業で問題になりやすい例を挙げています。

場面労働時間になる例
移動時間社用車での乗り合いを指示されている、移動の前に会社で資材の積み込みを指示されている、車中で上司と打合せをしている
手待ち時間指示があれば即時に作業することを求められ、離れることが保障されていない待機
着替え・準備作業開始前の朝礼、準備体操、作業終了後の現場の掃除
教育新規入場者教育、KYミーティング

直行直帰で、移動中に業務の指示を受けず、移動手段も自由な場合は、一般には労働時間に当たらないとされています。ただし、どの時間が当たるかは個別の判断になるため、迷うときは所轄の労働基準監督署に確かめてください。朝礼やKYの時間を数えていなかった会社は、数え方を変えるだけで時間外が増えることがあります。

建設業の時間外労働の上限を守るための月ごとの管理

建設業の時間外労働の上限を守るために、厚生労働省の解説はチェックポイントを5つ挙げています。1日・1か月・1年の時間外が36協定の時間を超えないこと、休日労働が協定の回数・時間を超えないこと、特別条項の回数が協定の回数を超えないこと、毎月の時間外+休日労働が100時間以上にならないこと、どの2〜6か月平均でも80時間を超えないことです。

  1. 日ごとに記録する出勤・退勤と休憩、移動や朝礼の時間を、労働時間の決まりに沿って記録する
  2. 月末に集計する法定時間外と法定休日の労働を、1人ずつ合計する
  3. 上限と照らす月100時間・2〜6か月平均80時間・45時間超の回数・年の累計を確かめる
  4. 翌月を見直す上限に近い人の段取りや人の配置を、職長と見直す
図:建設業の時間外労働を月ごとに管理する流れ(一般的な順番)

厚生労働省の解説には、時間外と休日労働の合計が80時間を超える月がまったくない事業場であれば、チェックポイントの1〜3だけを守ればよい、とも書かれています。まず自社の作業員の月ごとの合計を出してみて、80時間を超える月があるかどうかを見ることから始めるとよいでしょう。全員を1か月で見渡す方法は、残業時間の管理表エクセルで紹介しています。

工期そのものが短すぎると、現場の工夫だけでは上限を守れません。厚生労働省の解説は、発注者に時間外労働の上限規制を守れる工期の設定への協力を求め、受注者にも著しく短い工期で契約しないよう求めています。国土交通省の「工期に関する基準」も、2024年3月に上限規制の適用を踏まえて改定されています。

上限に近い人が出たときの手の打ち方

建設業の時間外労働の上限に近い人が出たとき、現場でとれる手は限られています。よく使われるのは、同じ班の中で作業を分け直す、応援の人を入れる、工程の順番を入れ替えて忙しい作業を分散させる、の3つです。どれも、上限に近いことが月の途中で分かっていないと間に合いません。

月の半ばに一度、時間外の途中の合計を出すだけでも、手を打てる時間が増えます。半月で時間外が30時間を超えている人は、そのままのペースだと月60時間を超えて割増も5割になるので、段取りを見直す目安になります。上限の判断に迷う働き方(変形労働時間制、休日の振替が多いなど)があるときは、社会保険労務士に確かめてください。

建設業の時間外労働の上限を無料テンプレートで管理するには

時間外労働の管理表(1人・年間)の無料テンプレートは、1人の作業員の1年分の時間外労働と休日労働を、1か月1行で記録するExcelです。毎月の数字を入れると、月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内を自動で判定し、45時間を超えた月が特別条項の何回目かも表示します。前年度の10月〜3月の欄があるので、年度の初めの平均も正しく出ます。

時間外労働の管理表(1人・年間)(無料Excel)記入用・記入例・説明の3シート
時間外労働の管理表(1人・年間)
氏名〇〇 一郎職種現場作業(型枠)36協定の起算日2027年4月1日
特別条項有月の上限(時間外+休日)80年の上限(時間外)65045時間超の回数の上限636協定の特別条項の数字を入れる
時間はすべて「法定労働時間を超えた時間外労働」と「法定休日の労働」です。前年度の10月〜3月も入れると、4月〜8月の2〜6か月平均が正しく出ます(平均は前の協定の期間にまたがって見ます)。
月時間外労働法定休日の労働合計月100時間未満2〜6か月平均の最大平均80時間以内45時間超時間外の累計36協定との照合
前年度 10月50050(前年度)
11月47855(前年度)
12月52860(前年度)
1月40040(前年度)
2月45045(前年度)
3月48048(前年度)
4月40040OK48OK40限度時間内
5月52860OK50OK超92特別条項(1回目)
6月38038OK49OK130限度時間内
7月61869OK55.7OK超191特別条項(2回目)
8月30030OK49.5OK221限度時間内
9月44852OK50.3OK265限度時間内
10月45853OK52.5OK310限度時間内
11月70878OK65.5OK超380特別条項(3回目)
12月781694OK86NG(平均80時間超)超458協定超え
1月35035OK69OK493限度時間内
2月50858OK66.3OK超543特別条項(5回目)
3月42042OK61.4OK585限度時間内

(この下に3行あります。全体はダウンロードしたExcelで見られます)

実際の画面:時間外労働の管理表(1人・年間)の「記入例」シート(ダウンロードできるExcelをそのまま表示)

記入例は、この記事の〇〇 一郎さんの1年分です。12月の行で、2か月平均86時間の「NG」と、36協定の月の上限を超えた「協定超え」が出ているのを確かめられます。労務フクロウでは、全員を1か月で見る管理表や36協定の下書きも、登録不要で配っています。

建設業の時間外労働の上限のよくある質問

建設業の時間外労働の上限は、いつから適用されていますか?

2024年4月1日からです(労働基準法 第139条第2項の猶予が2024年3月31日で終わりました)。それより前から続いていた協定は、協定の初日から1年を経過する日まで猶予が続く扱いでした。

現場の職長や事務員も対象ですか?

会社の主たる事業が建設なら、事務所や営業所で働く人も対象です。労働基準法 第41条第2号の管理監督者は、労働時間の決まりが適用されないため、時間外労働の上限の対象外です。ただし、肩書きではなく実態で判断されます。

2〜6か月平均は、36協定の年度をまたいで計算しますか?

またいで計算します。4月の平均を出すには前年度の11月〜3月の数字が要るので、年度が変わっても前の年の記録を残しておいてください。

災害の復旧工事でも同じ上限ですか?

災害時の復旧・復興の事業には、月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内が適用されない例外があります。年720時間と年6回は適用されます。くわしくは36協定と災害復旧の記事で説明しています。

建設業の時間外労働の上限のまとめ

建設業の時間外労働の上限は、2024年4月から一般の業種と同じになり、時間外だけで数える上限と、休日労働を含めて数える上限の両方を守る必要があります。

  • 限度時間は1か月45時間・1年360時間、特別条項でも年720時間・45時間超は年6回まで(時間外だけ)
  • 時間外と休日労働の合計は、毎月100時間未満、2〜6か月のどの平均でも80時間以内(特別条項の有無にかかわらず常に)
  • 2〜6か月平均は5つの平均を出し、年度をまたいで計算する
  • 違反すると6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第119条)
  • 移動・朝礼・KY・教育の時間が労働時間に当たるかを、社内でそろえておく

判断に迷うことは、所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめてください。まずは、いちばん忙しかった作業員の1年分の数字を、管理表に入れてみてください。

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